まえがき
2016年8月東京メトロ銀座線青山一丁目駅の痛ましい事故が起こり、それがきっかけとなって、視覚障害者のホーム転落事故防止の検討と対策が進められてきました。
そのあとも相次いで6件もの視覚障害者の転落死亡事故が起きています。
これらの転落事故を防ぐ究極の防止対策はやはり「ホームドアを全ての駅ホームに設置する」ことであると言えます。
また、2018年12月に東京練馬区において、早朝、音響信号機があるのにも関わらず作動していない時間帯に、横断歩道を渡っていた視覚障害者が車にはねられ命を落とすという痛ましい事故も発生しています。
この他にも自転車との接触事故をはじめとして、通行人が使用している「歩きスマホ」による事故も発生しています。
事故防止の設備を設置するには、ホームドアの場合は、設置費用が高額なこと、そして駅の構造上の問題などがあり、2017年度末での設置済みの数は725駅(日本の総駅数9,500)にとどまっています。
また、音響信号機については設置が進んでいるとは言えず、これについては近隣住民の反対があるとも聞いています。
以上のことから、いつになったら視覚障害者が安全に安心して外出できるかが今日的な課題となっています。
このようなことを踏まえ、神奈川県視覚障害者福祉協会では、2018年9月と10月にわたって外出時のさまざまな事柄についてアンケート調査を実施しました。
この調査に当たっては視覚障害者約200人、晴眼者約600人を対象に調査を行いました。
そして、神奈川工科大学小川研究室の協力を得て調査結果を分析し、本報告書を作成しました。
そこで、外出に関してさまざまなことが見えてきました。
この調査結果を踏まえ、当会では次のような提言を行うこととしました。
1 国民全体に「視覚障害者の特性についての理解」を進める運動の推進
2 すべての駅に早期にホームドアを設置
3 ホームドアが設置されていない駅ホームには必ず内方線付点字ブロックの設置
4 音響信号機の作動時間の延長、及び歩行時間延長用小型送信機の使用可能な信号機の増設
5 公共施設での音声誘導システムの常態化
6 市街地や駅において、視覚障害者への適切な「声かけ」運動の推進
特定非営利活動法人 神奈川県視覚障害者福祉協会
理事長 鈴木 孝幸
- 1.目的
- 2.方法
- 3.視覚障害者対象のアンケート調査結果
- 3.1 回答者の属性
- (1) 年齢層
- (2) 性別
- (3) 手帳等級
- (4) 職業
- 3.2 外出方法
- (1) 単独外出の有無
- (2) 外出時の使用用具
- (3) 一人での交通機関の利用
- (4) 同行援護の利用
- (5) 同行援護以外での人的支援
- 3.3 視覚障害者関連の設備など
- (1) 点字ブロック
- (2) 内方線付きの点字ブロック
- (3) 点字ブロックの色
- (4) エスコートゾーン
- (5) 歩道と車道の段差
- 3.4 街で聴こえる音
- (1) 音の出る信号機
- (2) 改札口の音
- (3) ホーム上の階段の鳥の声
- (4) 地下に入る入口での音差
- 3.5 ホームドア
- (1) ホームドア
- (2) ホームドアの一般の人への効果
- (3) 設置に対する行政、鉄道会社の負担
- (4) 設置に運賃の値上げに対する意識
- 3.6 電車の車両
- (1) 優先席
- (2) 携帯やスマホの電源
- (3) 女性専用車両
- (4) 弱冷房車
- (5) ドアに付いている車両番号
- (6) ドアの開閉ボタン
- (7) ドアの開閉ボタンの位置
- 3.7 自動車(ハイブリッドカー・電気自動車)
- (1) 静かな車に困っている人
- (2) 静かな車に音を出す装置
- (3) 静かな車で音が出るのを止める装置
- (4) ある程度音が出る必要性
- 3.8 外出時
- (1) 声をかけられたか
- (2) 声をかけてほしいと思ったか
- (3) 断ったことがあるか、その理由
- 4.一般晴眼者対象のアンケート調査結果
- 4.1 回答者の属性
- (1) 年齢層
- (2) 性別
- (3) 手帳等級
- (4) 職業
- 4.2 障害者について
- 4.3 視覚障害者関連の設備など
- (1) 点字ブロック
- (2) 内方線付きの点字ブロック
- (3) 点字ブロックの色
- (4) エスコートゾーン
- (5) 歩道と車道の段差
- (6) 点字ブロック上に物を置くこと
- 4.4 街で聴こえる音
- (1) 音の出る信号機
- (2) 改札口の音
- (3) ホーム上の階段の鳥の声
- (4) 地下に入る入口での音
- 4.5 ホームドア
- (1) ホームドア
- (2) ホームドアの一般の人への効果
- (3) 設置に対する行政、鉄道会社の負担
- (4) 設置に運賃の値上げに対する意識
- 4.6 電車の車両
- (1) 優先席
- (2) 携帯やスマホの電源
- (3) 女性専用車両
- (4) 弱冷房車
- (5) ドアに付いている車両番号
- (6) ドアの開閉ボタン
- (7) ドアの開閉ボタンの位置
- (8) 位置がわからない人に気づいたことの有無
- (9) その際、どう対処したか
- 4.7 自動車(ハイブリッドカー・電気自動車)
- (1) 静かな車に困っている人
- (2) 静かな車に音を出す装置
- (3) 静かな車で音が出るのを止める装置
- (4) ある程度音が出る必要性
- 4.8 外出時
- (1) 視覚障害者を見かけたこと
- (2) 声をかけたか
- (3) 声のかけ方を知っているか
- (4) 声をかけたことがあるか
- (5) 断られたことがあるか
- 5. 視覚障害者と晴眼者とのアンケート結果の比較
- 5.1 視覚障害者の回答者と晴眼者の回答者の属性の特徴の比較
- (1) 回答者の男女比の特徴
- (2) 回答者の年齢層の特徴
- 5.2 視覚障害者用の設備等
- (1) 点字ブロックについて
- (2) 内方線付きの点字ブロックについて
- (3) エスコートゾーンについて
- (4) 歩道と車道の段差について
- 5.3 街で聴こえる音
- (1) 音の出る信号機について
- (2) 改札口のピンポンという音について
- 5.4 ホームドアについて
- (1) ホームドア
- (2) 電車の車両について
- 1) 優先席について
- 2) 女性専用車両について
- 3) 弱冷房車について
- 4) 車両番号について
- 5) ドアの開閉ボタンについて
- 5.5 自動車について
- 6. 考察
- 添付資料