2 当事者編Q&A
- Q1 移動支援事業と同行援護事業は制度の考え方が違うのですか?
- A1 これまでの移動支援事業は視覚障害者のための外出時の支援も「介護」と捉えていましたが、同行援護事業では、「視覚情報の提供」と位置付けられました。
そのため、従業者は、利用者の外出時の情報提供を主なサービス内容として活動するものという考え方です。
- Q2 「身体介護を伴う・伴わない」の表現があるのは何故ですか?
- A2 同行援護は情報提供が基本ですが、介護的援助の必要な人はその援助内容も加味されます。そのため、情報提供のみの方は「身体介護伴わない」、介護援助も必要な方は「身体介護伴う」と表現されます。身体介護を伴う場合の基準は別に定められています。
- Q3 移動支援事業では地域格差が大きいと言われていましたが、同行援護事業になれば格差はなくなるのでしょうか?
- A3 移動支援事業は障害者自立支援法の地域生活支援事業に位置付けられており、それぞれの市町村において実施内容を決めて行われる事業でした。これに対して同行援護事業は同法の自立支援給付に位置付けられますので、国の責任において全国的に同じルールで実施される事業となります。
ただし、自治体の担当職員の理解不足や、同行援護事業所数の不足などによって、地域格差が生じることは考えられます。
このような差がなく、利用しやすい内容になるように、自治体と共に理解を深めることが必要と考えます。
- Q4 同行援護事業を利用できる対象者はどのようになっているのでしょうか?
- A4 基本的に障害者手帳の取得が必要です。その上で、視力、視野、夜盲などに関して国が定める一定以上の障害程度(アセスメント票)に該当する方で、移動に困難をかかえている人は身体障害者手帳の等級にかかわらず対象となります。
また、障害者自立支援法で必要とされる障害程度区分調査が利用の条件ではありません。しかし、同行援護事業は「自立支援給付」に位置づけられていることから、必要に応じて認定調査を受ける必要が出る方もいます。
- Q5 同行援護事業の利用で障害程度区分調査を受けることはないのですか?
- A5 今まで移動支援事業だけで、ホームヘルパーなどを利用していない場合は、受けることがあります。
また、重複障害や高齢などに伴う身体状況によって身体介護を伴うか伴わないかの認定を受けることになります。「身体介護を伴う」と認定される可能性がある場合には、その判断のために障害程度区分調査を受けることがあります。
障害程度区分調査で2以上、かつ、同調査項目における「歩行」「移乗」「移動」「排便」「排尿」の5項目のいずれかが「できる」以外となると「身体介護伴う」と判定されます。
- Q6 どのような利用が同行援護事業では認められるのでしょうか?
- A6 「通勤、営業活動等の経済活動に係る外出、通年かつ長期にわたる外出及び社会通念上適当でない外出を除き、原則として1日の範囲内で用務を終えるもの。」とされています。
通院や買い物などはもちろんのこと、社会参加や余暇活動についても認められます。年齢による制限も受けません。
- A7 直接的に利益を伴う場合を指します。ですから、マッサージや鍼・灸などに関する研修会の場合は、直接利益に関係しないため「営業活動」とは言えませんので、このような場合の研修会は同行援護の対象となります。
- Q8 通年かつ長期にわたる外出とはどのような場合をさしますか?
- A8 例えば、透析患者の通院や施設への通所による訓練などは、同行援護の対象とはなりません。こういった場合は市町村が判断しやすい移動支援事業でカバーすることになります。
- Q9 社会通念上適当でない外出とはどのような場合をさしますか?
- A9 風俗店やパチンコなどは同行援護の対象外と考えます。
場外の馬券や車券売場などは、買い物のついでと考えても差し支えないと考えます。
また、カラオケ、居酒屋などは、同行援護で定められている「社会通念上適当でない外出」の部類には入らないと考えています。その理由としては、カラオケなどは高校生だけでも利用が可能ですし、居酒屋などは家族連れで食事をすることを考えると不適当とは言えません。ただし、スナックは同行援護の対象とは言えず移動支援で対応することが望ましいと考えます。
- Q10 宗教活動や政治活動については認められるのですか?
- A10 宗教活動の中でも、布教活動は対象とはなりませんが、日曜礼拝や集会への参加、墓参りや初詣は同行援護の対象となります。
政治活動とは、いわゆる選挙運動をさすため同行援護の対象にはなりませんが、投票行為は国民の義務と権利の行使ですので当然同行援護の対象として認められます。
- Q11 介護保険のサービスを受けているのですが同行援護事業のサービスも利用できるのでしょうか?
- A11 同行援護は、介護保険のサービスにはない視覚情報提供がサービスの主目的ですので、たとえ介護保険の被保険者であっても利用可能であり、優先関係の対象とはなりません。ただし、通院の場合であって、要介護認定と障害程度区分認定の双方を受けている方の場合には、介護保険制度の訪問介護(通院等介助)と同行援護のサービス内容が同様になるケースもあるため、その際には、介護保険制度を利用して通院するよう市町村から指導を受けることが考えられます。
一部の自治体では、同行援護が視覚情報提供であることを十分に理解しないまま、要介護1以上の介護保険利用者が通院する場合は、介護保険が一律に優先であると説明しているところがあるようです。あくまでも両者のサービス内容が同様かどうかを確認し、異なる場合には優先関係がないことを伝えましょう。
なお、障害者自立支援法の居宅介護の通院等介助については優先関係の対象にはなりません。
- Q12 行き先での代読代筆は従業者にお願い出来ますか?
- A12 これまで明確となっていなかった代読代筆ですが、同行援護事業の内容に含まれることが明確となりました。また、「視覚情報の提供」が業務とされたことから、会議出席中の時間や通院などでの待ち時間でも、視覚障害者にとっては資料を読んでもらったり周囲の状況を伝えてもらうなどのことは必要なことですから対象となります。
- Q13 どのような内容でも、代読代筆は可能ですか?
- A13 基本的には可能ですが、不動産売買や融資に関する契約などは対象となりません。
- Q14 自宅内での代読代筆も支援の内容に含まれるのでしょうか?
- A14 自宅内では出来ません。自宅においての代読代筆については、居宅介護サービスで可能とされています。そのため、同行援護とは別に市町村に支給の申請を行うことが必要となります。
- Q15 宿泊を伴う外出であっても従業者は利用出来ますか?
- A15 1日単位に従業者の稼働時間を明確に終了させることによって可能です。厚生労働省も「一日の連続」として認めています。
制度を利用する側も、宿泊の意味を理解する必要があります。宿泊とは従業者が夜勤を行うことと同様の意味があるため、同行援護や移動支援ではこのような援助はないことから宿泊を認めることはありません。
更に、行動援護と同様に、1日何度利用しても、合わせて1回の報酬算定をするため、午前0時で切り分けることになります。一日の利用がそこで終了することになります。
これは、障害者自立支援法に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年9月29日厚生労働省告示第523号)第3の1の注5と同じと考えられます。
- Q16 自宅発着でないと利用できないのでしょうか?
- A16 移動支援事業では自宅発着でないと利用を認めないという自治体があったようですが、同行援護事業については、開始及び終了ともに、自宅以外であっても問題はありません。それは、視覚障碍者の行動が多岐にわたっているため駅やバス停での待ち合わせや、現地待ち合わせなどパターンはいろいろであると考えられるからです。
- Q17 利用時間(支給量)の制限はどうなりますか?
- A17 国は「利用者のニーズに基づいた時間」として、明確な利用時間の上限は設けていません。基本的には利用者のニーズに基づき時間決定がなされるので、必要とされる時間が決定される方向となります。
また、国庫負担基準を月9890単位としています。これは概ね50時間に相当しますが支給の基準や上限ではありません。このところを誤解の無いように理解する必要があります。
更に、今までの移動支援の時間をそのまま同行援護にシフトする市町村がありますが、本人の意向と同じ場合はかまいませんが、そうでない場合は、市町村の担当者と話をすることが必要です。
- Q18 利用時間(支給量)は月単位だけなのですか?半年単位などでまとめて支給されることはできますか?
- A18 自立支援給付の位置づけになるため、月単位となります。
- Q19 利用時間(支給量)は同行援護事業アセスメント票の結果と関係はありまか?
- A19 アセスメント票は、利用できるかどうかを判断するだけで、支給量には影響を与えません。
- Q20 同行援護事業では1日の利用時間が決められているのですか?
- A20 国は制限をしていません。今まで移動支援事業では自治体によってそれぞれの基準を設けている場合がありますが、同行援護の場合、制限は設けられていません。もし、時間的な制限を受ける場合は、市町村や事業所がそのようにしていることであり、市町村や事業所に要望し是正してもらうことが必要です。
- A21 行動援護と同様に、1日何度利用しても、合わせて1回の報酬算定をするため可能となります。
障害者自立支援法に基づく指定障害福祉サービス等及び基準該当障害福祉サービスに要する費用の額の算定に関する基準(平成18年9月29日厚生労働省告示第523号)第3の1の注5と同じと考えられます。
- Q22 利用できる時間帯や利用エリアは、どのようになるのでしょうか?
- A22 時間帯やエリアは事業所が都道府県等に届け出た内容によって決まりますので、事業所ごとにことなります。
制度での差ではなく、事業所の移行がここで反映されることになりますので、事業所を選ぶときには慎重に考えることが必要です。
場合によっては、市町村が時間帯を決定していることがあります。「事務処理要領」に基づいて作成していますので、これを確認することも必要です。
- Q23 家族が居るなど家庭の事情によっては、利用できないことがありますか?
- A23 基本的に家庭の事情によって制約を受けることはありません。本人の必要性によって決定されます。
市町村の担当者で、家族がいることをことさらに言う職員がいますが、それは基本を知らない職員であるため、きちんと説明することが必要です。
- A24 生活保護及び市町村民税非課税世帯は無料、課税世帯については1割負担となります。市町村民税の額によって負担上限額が決められていますので、担当課にお尋ね下さい。なお、課税状況の判断となる範囲は、本人と配偶者です。
また、市町村によっては自己負担分を市町村が負担するところもあります。
- Q25 同行援護事業を利用するにはどのような手続きが必要なのでしょうか?
- A25 まずは、担当課に申請して下さい。その後認定の聴き取り(アセスメント票など)を受ける必要が出てきます。これらの方法については市町村ごとに決定しているため一律ではありません。詳細は市町村の担当課にお尋ねください。まずは、担当課に申請して下さい。その後認定の聴き取り(アセスメント票など)を受ける必要が出てきます。これらの方法については市町村ごとに決定しているため一律ではありません。詳細は市町村の担当課にお尋ねください。
- Q26 同行援護事業が実施されると、移動支援事業はなくなるのでしょうか?
- A26 基本的には移動支援事業で利用できていた内容は、すべて同行援護事業に移行されます。ただし、各自治体の独自判断で認められていた通勤・通学やグループ支援などは、同行援護事業の対象とはなりませんので、引き続き移動支援事業として利用することは可能です。
市町村が同行援護事業の開始を理由に移動支援事業がなくなることはありません。また、厚生労働省もこれまでの水準を維持することを支持しています。
結論から言えば、今までの移動支援事業の大半は同行援護になりますが、同行援護から外れた部分は移動支援で対応することとなっています。
- Q27 従業者の自家用車に乗せてもらうことは可能でしょうか?
- A27 同行援護事業のサービスを受けている時間帯については、従業者が運転する車に乗って移動することは可能ですが、算定はされません。この部分で対応することをお考えであれば、福祉有償運送の許可を取得している事業所との契約が必要と考えます。
- Q28 同行援護事業は10月1日から実施でしょうか?
- A28 すべての市町村が10月1日からは間に合わないかも知れませんが順次移動支援事業制度から同行援護事業制度に移行されていきます。
制度移行を促進するために、神奈川県視覚障碍者福祉協会も神奈川県を通して、その速やかな移行がなされるように働きかけを行っています。